「それからが大事なんじゃないの?」

昨日、87歳の女性がサロンへお越しになった。
彼女の身体を見始めてから、もう3年ほどになる。
初めてお会いしたのは、84歳の頃だった。
当時は歩くこと自体が難しく、一歩進むたびに強い痛みを感じているようだった。
身体の深いところに強い緊張があり、それが歩く時の痛みにつながっていた。
ご本人も、これからどうなってしまうのかと途方に暮れていたという。
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その状態は、施術を始めてから比較的早く改善した。
痛みが軽くなり、以前よりも自由に歩けるようになった。
通常であれば、そこで施術は終わる。
困っていたことが解決したのだから、それでよい。
実際、カラダナオルへお越しになる方の多くも、状態が改善すれば、それきりになる。
私はそれを悪いことだとは思っていない。
必要がなくなったのなら、通い続ける理由はないからだ。
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けれど、彼女はその後も毎月欠かさず通っている。
昨日、施術をしながら、私はふと口にした。
「大抵の方は、治ったらそれでおしまいなんですよね」
すると彼女は、ごく自然に言った。
「それからが大事なんじゃないの?」
とても実感のこもった言葉だった。
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たしかに、その通りなのかもしれない。
痛みが出てから身体を整える。
歩けなくなってから、どうにかしようとする。
もちろん、それも必要なことである。
けれど、大きな不調が起きてから元へ戻すよりも、その前から身体を整えておくほうがよい。
一度よくなった身体を、そこで終わりにしない。
その先で何をするのか。
どのように日常を過ごしていくのか。
彼女が言う「それから」には、そういう意味も含まれているのだと思う。
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彼女は最近、太極拳を始めた。
さらに今度は、新しいダンスにも挑戦するという。
87歳になって、新しいことを始める。
できなくなったことを数えるのではなく、これからできることを増やしていく。
とてもたくましいと思う。
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健康になったから、新しいことを始められるのか。
新しいことを始めるから、さらに健康になるのか。
おそらく、その両方なのだろう。
身体がよくなると、行動が変わる。
行動が変わると、身体もまた変わっていく。
彼女は身体を維持するためだけに通っているのではない。
整った身体を使って、もう一度、自分の人生を動かしている。
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彼女は最近、
「年々、健康になっている」
と話す。
87歳の人から出てくる言葉としては、かなり力強い。
一般的には、年齢を重ねれば、できないことが増えていくと考えられている。
昨日までできたことが、少しずつできなくなる。
身体が衰えていくことを受け入れるのが、年を取ることだと思っている人も多い。
けれど彼女は、84歳の頃よりも、87歳になった今のほうが元気だと感じている。
歩くことさえ難しかった人が、太極拳を始め、次はダンスを始めようとしている。
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おそらく大きいのは、彼女自身が本当に、
「私は年々健康になっている」
と思っていることだろう。
初めてここへ来た時、歩けるようになる未来は、なかなか想像できなかったと思う。
そこから身体が変わった経験が、彼女に大きな自信を与えた。
「ここへ来れば、どうにかなる」
彼女は、そう信じてくださっているのかもしれない。
けれど、それは私が一方的に治すという意味ではない。
ここへ来れば、自分の身体をもう一度立て直せる。
自分には、まだよくなっていく力がある。
そう思えること自体が、彼女の身体を動かす原動力になっているのではないだろうか。
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人が自分の身体をどのように捉えているかは、とても大切である。
年齢とともに悪くなる一方だと思っているのか。
それとも、これからもよくなる余地があると思っているのか。
その違いは、日々の選択にも表れる。
よくなると思っていれば、太極拳を始めることができる。
新しいダンスにも挑戦できる。
そして、その行動がまた、身体を変えていく。
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私自身も、身体にはかなり気を使っている。
そうは言っても、タンゴで無理をすることがある。
会食が続き、食べすぎたり飲みすぎたりすることもある。
いつも完璧な生活を送っているわけではない。
それでも普段はある程度節制し、身体を整えながら暮らすようにしている。
一度も崩さないことよりも、崩れた時に早く戻れることのほうが大切なのだと思う。
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私は時々、彼女に冗談を言う。
「このままいけば、120歳くらいまで元気にいけるんじゃないですか」
すると彼女は、いつも笑っている。
ただ長く生きることだけに、どれほどの意味があるのかはわからない。
大切なのは、健康な状態で生きることだと思う。
自分の足で歩く。
行きたい場所へ行く。
会いたい人に会う。
そして、いくつになっても新しいことを始める。
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84歳の時には、歩くことさえ難しくなり、途方に暮れていた。
それが87歳になった今、
「年々、健康になっている」
と言える。
太極拳を始め、今度は新しいダンスにも挑戦する。
そのように年齢を重ねられる人生は、本当に素晴らしいと思う。
「それからが大事なんじゃないの?」
昨日の彼女の言葉を、私自身も忘れないようにしたい。



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