十秒の時差
- Admin
- 6月27日
- 読了時間: 3分

昨日は、日本対スウェーデンのワールドカップだった。
朝8時キックオフだったので、7時には起きて準備を始めた。
二階に寝室がある私たちは、いつも一階にいるお義父さんの存在を少し気にしながら暮らしている。
下へ降りると、お義父さんはすでに新聞を読み、テレビをつけて試合が始まるのを待っていた。
私はそそくさと準備を済ませ、自分たちの部屋で試合を見ようと思った。
ところが、プロジェクターが起動しない。
「ファン異常」と表示され、何度試しても同じだった。
仕方なくエアコンをつけ、本体を少し冷やして様子を見ることにした。
その間は、お義父さんと一緒にダイニングで試合を見ていた。
しばらくすると、プロジェクターも無事に起動したので、自分たちの部屋へ戻って観戦を続けた。
前半は0対0。
試合は静かに進んでいた。
⸻
ハーフタイムになり、二階で寝ていた妻を起こしに行った。
「試合見てるの?」
「うん、自分たちの部屋で。」
そして私は何気なく言った。
「お義父さん、相変わらず何が起きても無反応なんだよ。」
ゴールが決まりそうになっても。
惜しい場面でも。
ただ静かに画面を見つめている。
妻は笑いながら、
「大変だね。一緒に住むのも気を遣うね。」
と言った。
⸻
私はまた部屋へ戻り、試合を見始めた。
しばらくすると、二階で寝ていた妻が起きてきた気配がした。
階段を下り、そのままダイニングへ向かったようだ。
ダイニングは、私たちがプロジェクターで試合を見ている部屋のすぐ隣にある。
すると、妻の大きな声が聞こえてきた。
「入ったの?」
お義父さんは耳が遠いので、普段から話す時は自然と大きな声になる。
しかし、私が見ているネット配信では、まだ何も起きていない。
「あれ?」
と思っていると、十秒ほど後にゴールシーンが映し出された。
その時、初めて気づいた。
地上波とインターネット配信では、およそ十秒ほど時差があるのだ。
これでは、隣の部屋から結果が聞こえてしまう。
結局、そのあとは私もダイニングへ移動し、お義父さんと妻と三人で地上波で試合を観戦した。
⸻
試合は1対1の引き分けだった。
正直、勝ち点3を逃したというよりも、負けを免れた試合だったように思う。
そんな試合だった。
⸻
それよりも印象に残ったのは、あの十秒だった。
同じ試合を見ていても、見えている時間が少し違う。
ほんの十秒。
それだけで、歓声が先に聞こえたり、結果を先に知ってしまったりする。
⸻
家族も少し似ているのかもしれない。
同じ家で暮らしていても、
感じ方も、
反応する速さも、
言葉を発するタイミングも、
みんな少しずつ違う。
その差を無理に埋めようとするよりも、
「ああ、この人は少し違う時間を生きているんだな。」
そう思えた方が、きっと楽なのだろう。
ほんの少しの時差。
ほんの少しの感度の違い。
そんなことを感じながら、お義父さんと暮らす毎日も、悪くないと思っている。



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