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痛いところがないのに来た方は、今までいません

  • 執筆者の写真: Admin
    Admin
  • 2 日前
  • 読了時間: 4分

昨日、大学生の男性がお見えになった。


アメリカンフットボールで痛めた足を見てほしいとのことだった。

ジャンプをする。


片足に重心を乗せる。


そうした動きをすると、足に痛みが走るという。


今回で二回目だった。

前回から、しばらく間が空いていた。


おそらく、再び足を痛めた時に、私のことを思い出してくれたのだろう。

そのことが、素直に嬉しかった。



アメリカンフットボールやラグビー、サッカーなどは、身体への負担が大きい。


走る。

止まる。

方向を変える。

相手とぶつかる。


一瞬のうちに、身体へ強い力が加わる。


特にアメリカンフットボールのような肉弾戦のあるスポーツでは、衝撃に備えるために全身が硬直しやすくなる。


痛みが出ているのは足でも、その原因が足だけにあるとは限らない。


身体のどこかが動かなくなり、別の場所が代わりに負担を引き受けていることもある。


そのため今回は、足だけではなく、全身のバランスを見ることにした。



私自身、以前は十年ほどテニスをしていた。

その間に、ぎっくり腰を三回経験した。


今になって考えると、当時の私は身体の使い方をほとんど理解していなかった。

姿勢が悪いという自覚もなかった。


自分では普通に立ち、普通に動いているつもりだった。


けれど、おそらく身体の片側ばかりを使い、同じ場所へ負担をかけ続けていたのだと思う。



テニスやゴルフのように、ラケットやクラブを片側で扱う競技では、どうしても身体の使い方に偏りが生まれる。


ボールを打つ方向も、身体をひねる方向も、毎回ほぼ同じである。

競技として上達するほど、その動きは繰り返される。


技術が磨かれる一方で、特定の筋肉や関節には負担が蓄積していく。


だからこそ、競技の練習とは別に、身体を整える時間が必要になる。



昨日の彼も、足だけを見て終わりにはしなかった。


上半身の緊張。

骨盤の傾き。

左右の重心。

足が地面を捉える感覚。


それらを確認しながら、少しずつ全身のバランスを整えていった。


最後に、もう一度ジャンプをしてもらった。

片足にも重心を乗せてもらった。


施術前に出ていた痛みは、その時点では感じないと言っていた。

もちろん、それで身体のすべてが元に戻ったとは限らない。


実際の練習へ復帰すれば、また強い負荷がかかる。



そこで、彼の身体の使い方から見て、どの筋肉が固まりやすいのかを伝えた。


そして、その筋肉を自分でほぐすためのセルフケアも教えた。

競技を続けていれば、身体には何度も同じような負荷がかかる。


どこが固まりやすいのか。

どのようにほぐせばよいのか。


自分の身体の傾向を知ることも、競技を続けるための技術なのだと思う。



彼を見ながら、ふと思った。


自分が二十一歳の頃、これほど自分の身体を大切にしていただろうか。

おそらく、していなかった。


痛みが出ても、少し休めば治ると思っていた。


若いのだから、身体はいつでも動くものだと思っていた。


身体を定期的に整えるという発想自体が、ほとんどなかった。



十年ほど前、日本へ帰国した頃、近所の整体へ行ったことがある。


特に強い痛みがあったわけではない。

時間があったので、身体のメンテナンスをしてもらおうと思い、軽い気持ちで訪れた。


すると、担当した先生から驚いたように聞かれた。


「痛いところはないのですか」

「ありません。メンテナンスです」


そう答えると、さらに驚かれた。

「痛いところがないのに来た方は、今までいません」


その時は、そういうものなのかと思った。



自分が身体に関わる仕事を始めてから、その先生の言葉を思い出すことがある。

多くの人は、痛みが出てから身体を見ようとする。


動けなくなる。

眠れなくなる。

仕事や生活に支障が出る。


そこまで来て、初めて施術を受けようと考える。


身体を悪くしないために整えるという考え方は、まだそれほど一般的ではないのかもしれない。



もちろん、昨日の彼にも明確な痛みがあった。

予防のためだけに来たわけではない。


それでも彼は、ほかにもさまざまな選択肢がある中で、わざわざ私のところへ来てくれた。


カラダナオルの施術料は、一万円である。

大学生にとって、決して小さな金額ではない。


そのお金を、自分の身体のために使うと決めた。

そのことを、私はとても嬉しく思った。



必要なセルフケアを一通り伝えると、彼は満足した様子で帰っていった。


一年後。

五年後。

十年後。


彼がどのように競技を続け、どのように自分の身体と付き合っていくのか。

少し楽しみにしている。

 
 
 

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