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「それからが大事なんじゃないの?」

8月25日
読了時間: 5分

昨日、87歳の女性がサロンへお越しになった。


彼女の身体を見始めてから、もう3年ほどになる。


初めてお会いしたのは、84歳の頃だった。


当時は歩くこと自体が難しく、一歩進むたびに強い痛みを感じているようだった。


身体の深いところに強い緊張があり、それが歩く時の痛みにつながっていた。


ご本人も、これからどうなってしまうのかと途方に暮れていたという。



その状態は、施術を始めてから比較的早く改善した。


痛みが軽くなり、以前よりも自由に歩けるようになった。


通常であれば、そこで施術は終わる。


困っていたことが解決したのだから、それでよい。


実際、カラダナオルへお越しになる方の多くも、状態が改善すれば、それきりになる。


私はそれを悪いことだとは思っていない。


必要がなくなったのなら、通い続ける理由はないからだ。



けれど、彼女はその後も毎月欠かさず通っている。


昨日、施術をしながら、私はふと口にした。


「大抵の方は、治ったらそれでおしまいなんですよね」


すると彼女は、ごく自然に言った。


「それからが大事なんじゃないの?」


とても実感のこもった言葉だった。



たしかに、その通りなのかもしれない。


痛みが出てから身体を整える。


歩けなくなってから、どうにかしようとする。


もちろん、それも必要なことである。


けれど、大きな不調が起きてから元へ戻すよりも、その前から身体を整えておくほうがよい。


一度よくなった身体を、そこで終わりにしない。


その先で何をするのか。


どのように日常を過ごしていくのか。


彼女が言う「それから」には、そういう意味も含まれているのだと思う。



彼女は最近、太極拳を始めた。


さらに今度は、新しいダンスにも挑戦するという。


87歳になって、新しいことを始める。


できなくなったことを数えるのではなく、これからできることを増やしていく。


とてもたくましいと思う。



健康になったから、新しいことを始められるのか。


新しいことを始めるから、さらに健康になるのか。


おそらく、その両方なのだろう。


身体がよくなると、行動が変わる。


行動が変わると、身体もまた変わっていく。


彼女は身体を維持するためだけに通っているのではない。


整った身体を使って、もう一度、自分の人生を動かしている。



彼女は最近、


「年々、健康になっている」


と話す。


87歳の人から出てくる言葉としては、かなり力強い。


一般的には、年齢を重ねれば、できないことが増えていくと考えられている。


昨日までできたことが、少しずつできなくなる。


身体が衰えていくことを受け入れるのが、年を取ることだと思っている人も多い。


けれど彼女は、84歳の頃よりも、87歳になった今のほうが元気だと感じている。


歩くことさえ難しかった人が、太極拳を始め、次はダンスを始めようとしている。



おそらく大きいのは、彼女自身が本当に、


「私は年々健康になっている」


と思っていることだろう。


初めてここへ来た時、歩けるようになる未来は、なかなか想像できなかったと思う。


そこから身体が変わった経験が、彼女に大きな自信を与えた。


「ここへ来れば、どうにかなる」


彼女は、そう信じてくださっているのかもしれない。


けれど、それは私が一方的に治すという意味ではない。


ここへ来れば、自分の身体をもう一度立て直せる。


自分には、まだよくなっていく力がある。


そう思えること自体が、彼女の身体を動かす原動力になっているのではないだろうか。



人が自分の身体をどのように捉えているかは、とても大切である。


年齢とともに悪くなる一方だと思っているのか。


それとも、これからもよくなる余地があると思っているのか。


その違いは、日々の選択にも表れる。


よくなると思っていれば、太極拳を始めることができる。


新しいダンスにも挑戦できる。


そして、その行動がまた、身体を変えていく。



私自身も、身体にはかなり気を使っている。


そうは言っても、タンゴで無理をすることがある。


会食が続き、食べすぎたり飲みすぎたりすることもある。


いつも完璧な生活を送っているわけではない。


それでも普段はある程度節制し、身体を整えながら暮らすようにしている。


一度も崩さないことよりも、崩れた時に早く戻れることのほうが大切なのだと思う。



私は時々、彼女に冗談を言う。


「このままいけば、120歳くらいまで元気にいけるんじゃないですか」


すると彼女は、いつも笑っている。


ただ長く生きることだけに、どれほどの意味があるのかはわからない。


大切なのは、健康な状態で生きることだと思う。


自分の足で歩く。


行きたい場所へ行く。


会いたい人に会う。


そして、いくつになっても新しいことを始める。



84歳の時には、歩くことさえ難しくなり、途方に暮れていた。


それが87歳になった今、


「年々、健康になっている」


と言える。


太極拳を始め、今度は新しいダンスにも挑戦する。


そのように年齢を重ねられる人生は、本当に素晴らしいと思う。


「それからが大事なんじゃないの?」


昨日の彼女の言葉を、私自身も忘れないようにしたい。

 
 
 

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