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人が人を治すのは、おこがましい

  • 執筆者の写真: Admin
    Admin
  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

昨日、久しぶりに一人の研修生がサロンを訪れた。

彼は最近、東京に自分の整体サロンを開いた。


まだ開業したばかりである。


少しずつお客様は来ているものの、集客には苦労しているという。


「やっぱり、集客は難しいですよね」


彼がそう言った。


「そうだね」


私は答えた。


腕がよければ、自然とお客様が集まる。


残念ながら、それほど単純な世界ではない。



そもそも、整体サロンの数は多い。


駅の周辺を少し歩くだけでも、整体、整骨、鍼灸、マッサージなど、身体を扱う店がいくつも見つかる。


整骨院では、症状によって健康保険が適用される場合もある。

一方、私たちのような整体は、原則として自費である。


お客様から見れば、その違いもわかりにくい。


数あるサロンの中から一つを選び、保険の利かない施術にお金を払う。


初めて訪れる方にとっては、それだけでも大きな決断なのだと思う。



私は彼に、カラダナオルの経営について話した。

ほかのサロンへ半年、一年と通っても変化を感じられなかった方が来ることがある。


私は、できる限り一回の施術で結果を出したいと思っている。


すると実際に、一度の施術で悩んでいた状態が改善し、それきりになることもある。


「お客様にとっては、それでいいんだよ」


私は言った。


「困っていたことが解決したのなら、何度も通う必要はないから」


もちろん、経営という視点から見れば、安定させやすい仕組みではない。



「そもそも、人が人を治すなんて、おこがましいと思っているんだよね」


私は彼にそう話した。


施術者が上にいて、受ける人が下にいるわけではない。


誰かが一方的に治し、もう一方が治してもらう関係でもない。


身体を整えるのは、最後にはその人自身である。


施術者にできるのは、その働きを妨げているものを見つけ、身体が戻りやすい状態をつくることくらいなのだと思う。


カラダナオルが掲げているのも、


「身体は、自ら整う」


という考え方である。



だから私は、自分から次回の予約を勧めない。

施術を終え、身体が楽になったと喜んでいる方へ、


「では、次回はいつにしましょうか」


と聞くことに、どうしても違和感がある。


必要だと思えば、また来てくださる。

必要がなければ、来なくてよい。


その判断は、ご本人に委ねたい。



「でも、それだと経営は難しいですよね」


彼が言った。

まったくその通りである。


お客様との依存関係をつくらない。

必要のない施術を勧めない。

できるだけ一回で結果を出す。


それらを守ろうとするほど、一般的なリピート型の経営からは離れていく。


理念としては間違っていないと思う。


しかし、理想だけで家賃を払うことはできない。



だから、多くのサロンが回数券を販売する。

次の予約を取り、定期的に通ってもらう。


それを一概に否定するつもりはない。


施術には継続が必要な場合もある。


定期的なメンテナンスを望む方もいる。


経営を続けなければ、誰かを支えることもできない。

どこまでが必要な提案で、どこからが経営側の都合なのか。


その境界は、いつも明確とは限らない。



「うちらのような整体でも大変だけど、飲食店はもっと大変だよ」

私は彼に言った。


整体であれば、少なくとも食材を毎日仕入れる必要はない。


余ったものを廃棄することもない。

多くの場合、大勢の従業員を雇う必要もない。

けれど、飲食店には仕入れがある。


家賃がある。

光熱費がある。

アルバイトを雇えば、人件費もかかる。


お客様が来ても来なくても、食材と人員を準備しておかなければならない。

そう考えると、本当に大変な商売だと思う。


私たちはしばらく、自営業者同士でその苦労を分かち合った。



それでも私は、回数券やリピートだけに依存しない、第二、第三の道をつくりたいと思っている。


施術をする。

人に教える。

研修生を育てる。

身体の見方や考え方を伝える。


そして、学んだ人が自分の場所で仕事を始めた時には、その集客まで支えられるようになる。


昨日、彼の話を聞きながら、その思いをあらためて強くした。



自分の健康を大切にしながら、人の身体にも関わる。

施術を通じて、その人の生活や仕事について話す。



必要であれば身体を整え、必要がなければ何もしない。


少し身体の調子が悪い。

最近、仕事に疲れている。

何かがうまくかみ合っていない。

そんな時に、気軽に立ち寄れる場所でありたい。


身体だけでなく、生活や仕事についても話せる。


そして整ったら、またそれぞれの日常へ戻っていく。



彼のサロンも、そんな場所になってほしいと思っている。


一つのサロンが軌道に乗るまでには、時間がかかる。


技術があるだけでは足りない。

その人の考え方や人柄を知ってもらい、少しずつ信頼を積み重ねていく必要がある。

私自身も、まだ道の途中である。


それでも、自分が歩いてきた道を少しでも広げることができれば、後から来る人は歩きやすくなる。


「やっぱり、集客は難しいですよね」


その言葉に、いつまでも、


「そうだね」

と答えているだけではいけない。


「身体は、自ら整う」


その考え方を守りながら成り立つ仕事の形を、彼やほかの研修生たちと一緒につくっていきたいと思っている。

 
 
 

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