人が人を治すのは、おこがましい
- Admin
- 1 日前
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昨日、久しぶりに一人の研修生がサロンを訪れた。
彼は最近、東京に自分の整体サロンを開いた。
まだ開業したばかりである。
少しずつお客様は来ているものの、集客には苦労しているという。
「やっぱり、集客は難しいですよね」
彼がそう言った。
「そうだね」
私は答えた。
腕がよければ、自然とお客様が集まる。
残念ながら、それほど単純な世界ではない。
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そもそも、整体サロンの数は多い。
駅の周辺を少し歩くだけでも、整体、整骨、鍼灸、マッサージなど、身体を扱う店がいくつも見つかる。
整骨院では、症状によって健康保険が適用される場合もある。
一方、私たちのような整体は、原則として自費である。
お客様から見れば、その違いもわかりにくい。
数あるサロンの中から一つを選び、保険の利かない施術にお金を払う。
初めて訪れる方にとっては、それだけでも大きな決断なのだと思う。
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私は彼に、カラダナオルの経営について話した。
ほかのサロンへ半年、一年と通っても変化を感じられなかった方が来ることがある。
私は、できる限り一回の施術で結果を出したいと思っている。
すると実際に、一度の施術で悩んでいた状態が改善し、それきりになることもある。
「お客様にとっては、それでいいんだよ」
私は言った。
「困っていたことが解決したのなら、何度も通う必要はないから」
もちろん、経営という視点から見れば、安定させやすい仕組みではない。
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「そもそも、人が人を治すなんて、おこがましいと思っているんだよね」
私は彼にそう話した。
施術者が上にいて、受ける人が下にいるわけではない。
誰かが一方的に治し、もう一方が治してもらう関係でもない。
身体を整えるのは、最後にはその人自身である。
施術者にできるのは、その働きを妨げているものを見つけ、身体が戻りやすい状態をつくることくらいなのだと思う。
カラダナオルが掲げているのも、
「身体は、自ら整う」
という考え方である。
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だから私は、自分から次回の予約を勧めない。
施術を終え、身体が楽になったと喜んでいる方へ、
「では、次回はいつにしましょうか」
と聞くことに、どうしても違和感がある。
必要だと思えば、また来てくださる。
必要がなければ、来なくてよい。
その判断は、ご本人に委ねたい。
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「でも、それだと経営は難しいですよね」
彼が言った。
まったくその通りである。
お客様との依存関係をつくらない。
必要のない施術を勧めない。
できるだけ一回で結果を出す。
それらを守ろうとするほど、一般的なリピート型の経営からは離れていく。
理念としては間違っていないと思う。
しかし、理想だけで家賃を払うことはできない。
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だから、多くのサロンが回数券を販売する。
次の予約を取り、定期的に通ってもらう。
それを一概に否定するつもりはない。
施術には継続が必要な場合もある。
定期的なメンテナンスを望む方もいる。
経営を続けなければ、誰かを支えることもできない。
どこまでが必要な提案で、どこからが経営側の都合なのか。
その境界は、いつも明確とは限らない。
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「うちらのような整体でも大変だけど、飲食店はもっと大変だよ」
私は彼に言った。
整体であれば、少なくとも食材を毎日仕入れる必要はない。
余ったものを廃棄することもない。
多くの場合、大勢の従業員を雇う必要もない。
けれど、飲食店には仕入れがある。
家賃がある。
光熱費がある。
アルバイトを雇えば、人件費もかかる。
お客様が来ても来なくても、食材と人員を準備しておかなければならない。
そう考えると、本当に大変な商売だと思う。
私たちはしばらく、自営業者同士でその苦労を分かち合った。
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それでも私は、回数券やリピートだけに依存しない、第二、第三の道をつくりたいと思っている。
施術をする。
人に教える。
研修生を育てる。
身体の見方や考え方を伝える。
そして、学んだ人が自分の場所で仕事を始めた時には、その集客まで支えられるようになる。
昨日、彼の話を聞きながら、その思いをあらためて強くした。
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自分の健康を大切にしながら、人の身体にも関わる。
施術を通じて、その人の生活や仕事について話す。
必要であれば身体を整え、必要がなければ何もしない。
少し身体の調子が悪い。
最近、仕事に疲れている。
何かがうまくかみ合っていない。
そんな時に、気軽に立ち寄れる場所でありたい。
身体だけでなく、生活や仕事についても話せる。
そして整ったら、またそれぞれの日常へ戻っていく。
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彼のサロンも、そんな場所になってほしいと思っている。
一つのサロンが軌道に乗るまでには、時間がかかる。
技術があるだけでは足りない。
その人の考え方や人柄を知ってもらい、少しずつ信頼を積み重ねていく必要がある。
私自身も、まだ道の途中である。
それでも、自分が歩いてきた道を少しでも広げることができれば、後から来る人は歩きやすくなる。
「やっぱり、集客は難しいですよね」
その言葉に、いつまでも、
「そうだね」
と答えているだけではいけない。
「身体は、自ら整う」
その考え方を守りながら成り立つ仕事の形を、彼やほかの研修生たちと一緒につくっていきたいと思っている。



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